エレガント路線から転換 XJRに見る新生ジャガー
掲載 更新 carview! 文:岡崎 五朗/写真:吉田 宏隆
掲載 更新 carview! 文:岡崎 五朗/写真:吉田 宏隆
XJという名の付いた初めてのジャガーがデビューしたのは1968年。以来、XJシリーズはジャガーの中心車種として歴史を刻んできた。優美なデザインとしなやかな乗り味は他のどんな高級車にも真似のできないものであり、それが強力なドイツ勢を向こうに回してXJシリーズを常に一級品のプレミアム・セダンたらしめていた最大の理由である。
そんなブランドが、押しだし感の強さを誇るようになった。ジャガーとしても、こうした方針変更には大きな勇気が必要だったはず。しかしそれをやらなければ生き残っていけないのが今のマーケットだ。代々ジャガーを乗り継いできたような高貴な方々にとって、押しだし感などまったく必要ない。むしろ邪魔なだけだろう。しかしニューリッチと呼ばれる人は、出した金額に見合う押しだし感がなければなかなか興味を示してくれない。
事実、ここ数年のジャガーの業績は低迷している。なんとかしてメルセデスやBMW並の「わかりやすさ」を打ち出さなければ、ブランドとして立ちゆかないところまでジャガーは追い詰められているのだ。ちなみに、アウディがアクの強いシングルフレームグリルに変身したのも同じ理由から。そういう意味で、今回の方針変更は、わかりやすい特徴を持ったライバルがひしめく高級車マーケットにジャガーが進出していくことを意味する。アンダーステートメント性を歓迎する少数の人たちを相手にするより、ライバルは増えるが、数十倍の市場規模をもつマーケットへの参入をジャガーは選択したというわけだ。
僕はいま41歳だが、正直、4年前に書いた「ジャガーが似合う40代」にはなれていないと思う。しかしそれには「かつてのジャガー」という注釈が付く。今年デビューするXFなら楽に乗りこなせそうな気がするし、XJにしても、高貴さの代わりにアグレッシブさを身につけてきた現行モデルならなんとかなりそうな気がしてきた。もし僕と同じような考えをもつ人が多く現れれば、ジャガーの戦略は大成功である。
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